「留学」と聞くと、「英語力に自信がない」「臨床から離れてしまって大丈夫だろうか」「家庭やキャリアと両立できるのか」といった不安が真っ先に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。私自身も、留学前はまさに同じような気持ちでした。でも、実際にアメリカでの生活が始まってみると、そうした不安の多くは杞憂だったと感じています。そして何より、留学は自分を大きく成長させてくれる、本当に貴重なチャンスだと実感しています。
私は2024年9月から、ワシントンD.C.近郊にあるNational Institutes of Health(NIH)の一部門、National Institute on Deafness and Other Communication Disorders(NIDCD)にある Dr. Ronna Hertzano の研究室に所属し、「早期内耳障害のバイオマーカー探索」をテーマに基礎研究を行っています。Dr. Hertzano はMDとPhDの両方を持ち、臨床医としても活動されているため、Auditory and Vestibular Clinical Research Section のカンファレンスにも参加させていただき、臨床研究に触れる機会も得られています。
実は私も、最初から留学を強く意識していたわけではありません。専門医を取得するまでは臨床中心の毎日で、研究といえば臨床研究のみという状況でした。ただ、国際学会で発表した際に、現地で留学中の先輩方とお会いし、皆さんがとても楽しそうで充実した表情をされていたのが印象的で、「自分も挑戦してみたい」と強く思うようになりました。
帰局後、基礎研究の経験がないところからのスタートでしたが、教室の先生方の手厚い指導のおかげで学位を取得することができました。現在はポスドクという立場で給与を得ながら、留学生活を送っています。
もちろん、語学や生活面での苦労はありますし、家族での海外生活にはある程度の貯蓄も必要です。でも、日本を外から見ることで、多くの気づきがありました。限られたリソースの中で日本の研究をどう展開すべきか、日本の強みとは何か、そして医師として、研究者としてどう成長していくべきかを、日々考えさせられています。
そして何より、設備や知見、考え方の違いに触れながら進める研究は、視野を大きく広げてくれます。現地での研究経験はもちろん、家族との海外生活や旅、多様な人々との出会いも含めて、かけがえのない財産です。
もし、少しでも「海外で挑戦してみたい」という気持ちがあるなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。きっと想像以上に広く、刺激に満ちた世界が待っています。あなたの可能性を大きく広げる経験になるはずです。
当教室では、そうした挑戦を実現するための環境とサポート体制を整えています。少しでも興味を持たれた方は、どうぞ気軽にご相談ください。